「『歴史』という文言が、消えた」

「歴史」という文言が、消えた。 8月15日、恒例の政府主催・全国戦没者追悼式の首相式辞から。 「歴史の教訓を深く胸に刻み」は、「世界をより良い場とするため」に代わった。 アジア・太平洋地域への「加害責任」についても、2012年以降、触れず。 歴史に「謙虚に向き合う」との表現も、消えた。  なぜ歴史認識が大切か。それは、歴史認識が和解と友好の礎(いしずえ) だから。歴史事実は、謙虚に向き合って受け止める。過ちは心から反省して 謝罪する。賠償を完遂する。当たり前のことだ。このことなしに、民族と民族、 国と国との真の和解と友好はない。  この思いは、30数年前の私のフィリピン体験から、今も尚、大切にしていること。 その時の体験を以下に貼付しましす。合わせてその下に、戦後70年を迎えた 2015年に「戦後70年市民宣言・あいち」が安倍首相に送付した5つの 「緊急要請」も貼付しました。ご一読ください。 --------------------------------- <マニラで出会った老人>  住民としてフィリピンに二年間住み始めた最初の頃だった。1982年12月だったと思う。夕方、マニラ北東の住宅街に、友人を訪ねた。家の前の木陰に、白髪の老人が坐っていた。友人の叔父だ。片目を白い眼帯で覆い、杖を持って、椅子に坐っていた。  老人は、ありきたりの挨拶することなく、坐ったまま、私を鋭い眼で見上げて低い声で一言、「1942年から44年、あなたの父さんは何処にいたか?」。  私は即座に、老人の問いかけの意味が分かった。私の父は当時、東京・世田谷にいたが、フィリピンにいたとすれば、私の父たちが、老人の眼を、老人の左足を奪った、ということになる。  日本のフィリピン侵攻は、真珠湾攻撃から10時間後の1941年12月8日に開始。以後1944年12月の撤退まで、三年間にわたり、フィリピンを占領支配しました。マニラは瓦礫と化し、もっとも破壊された都市のひとつでした。  1931~1945年の十五年戦争だけでも、日本は2000万人もの人々のいのちを奪ったとされています。戦闘による殺害以外にも、民間人に対する虐殺や強姦、労働の強制や食糧の強奪を侵略した各地で行ってきました。(以下略)

<安倍首相への緊急要請>

1.安倍首相が8月に表明する「戦後70首相談話」は、加害の歴史を事実として正しく認識し、村山談話の核心部分を継承した談話とすること
 
1995年8月の村山談話は、アジア・太平洋戦争と植民地支配に対して、「国策を誤り」「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」などの言葉で、侵略戦争と植民地支配の事実を認め、謝罪と反省を表明しました。戦後70年の節目で出される首相談話は、村山談話に盛り込まれた歴史認識を継承したものにすること。
 
2.歴史の事実を直視し、国際的に確立された侵略の定義を認め、アジア・太平洋戦争が侵略戦争であったことを改めて表すること
 
 安倍首相は2013年4月の参議院本会議で、日本の植民地支配や侵略をめぐり、「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」と述べ、同年10月の国会質問主意書への答弁書でも「国際法上の侵略の定義については様々な議論が行われており、確立された定義を含めお答えすることは困難」との見解を述べました。
 
 しかし、国際的に侵略の定義は、1928年に締結された「戦争放棄に関する条約」(不戦条約)、日本政府も支持した1974年国連総会に於ける「侵略の定義に関する決議」で既に明らかになっています。
 
3.アジア・太平洋戦争と植民地支配の被害者に対し、国家賠償を速やかに実行すること
 
 日本の植民地支配と侵略戦争被害者個人への国家賠償は、2001年4月開催の「人種主義に反対する世界会議」(ダーバン会議)において採択された「宣言及び行動計画」、並びに2005年12月国連総会で採択された「基本的な原則及び国際人権法および国際人道法の重大な違反の被害者救済と賠償の権利に関するガイドライン」に基づいて速やかに行うこと。
 
4.日朝平壌宣言に基づき、速やかに日朝国交回復の実現に努力すること
 
 2014年5月のストックホルム合意にある具体的措置の実行と緊密な協議を続け、2002年9月の「日朝平壌宣言」に基づいて速やかに国交正常化交渉を進め、国交回復を実現すること。
 
5.軍事力によらない近隣諸国との友好関係を築く努力をすること
 
 安倍政権による南西諸島への自衛隊の配備強化や、沖縄・名護市辺野古への新基地建設、「積極的平和主義」の名のもとで行われている憲法違反の安全保障法制整備は、東アジアの緊張を高めています。辺野古の新基地建設や、南西諸島への自衛隊の配備・増強をやめ、憲法の平和主義を生かした外交によって平和の維持に努力すること。

Author: asiapeace